自分の言葉が、結局一番おもしろい

相手の立場って何だろう?

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こんにちは、木暮太一です。

ここまで、コミュニケーション能力を高める方法について、さまざまな技術・テクニックをご紹介してきました。一つひとつ身につけていくことで、みなさんの説明力は格段にアップします。ぜひ取り入れてみてくださいね。そして今日は、それらの技術をさらに強化してくれるものをお伝えします。

一体どうすればその技術が身につくのか? 結論から言いますと、「相手の世界観を体感する」ことです。そうすることで、「相手が理解できる言葉」を知ることができます。つまり、「相手がどんな言葉を話し、どんなことに興味があるのかを知って、自分も同じことを経験してみること」、です。相手がどんな話題が好きで、どんな言葉で会話しているかをあらかじめ知っておくと、「どんな表現だったら理解してもらえるか」が見えてくるのです。

「わかりやすく説明する」ためには、まず、どんな相手に伝えるかを考えなければいけません。そして、その相手のことを知らなければいけません。男性なのか、女性なのか、小学生なのか、高校生なのか、それとも社会人なのかで、表現方法も変わりますね。それと同様に、どんなテレビ番組を見ているのか、どんなこと(趣味)に興味があるのか、また学生時代にどんな勉強をしてきたのか――このようなことを知ると、その人が、これから説明する内容について、どれくらいの前提知識を持っているか、どんな言葉・表現だったら理解できるか、が分かってくるんです。
具体的な方法は、このあとで解説しますので、この段階では、「相手の世界観を知れば、相手が理解できる言葉が分かる」という理屈だけ押さえてください。

そしてそれができれば、相手が本当に感じていることがわかり、「相手の立場」に立てるのです。

 

ただし、ここで注意していただきたいことがあります。みなさんが知らなければいけないのは、「(そのテーマに関して)相手がどれくらい精通しているか」だけではない、といことです。これから説明する分野について、相手がどれほどの予備知識を持っているかを知ることはとても重要なことです。つまり、予備知識をどの程度持っているかを調べるということではないんです。

重要なのは「相手の前提知識」だけではなく、「相手が理解できる言葉」を知ることです。これは大きな違いですね。相手の知識レベル(相手がいる位置)を知ることは大事です。でも、それで分かるのは「何を説明すべきか」です。ただ、何を説明すべきか?(相手はどこまでを知っていて、どこから知らないか?)はわかっても、「どう説明すべきか?(その知らないことを、どのような表現で説明したらいいか?)」までは分かりません。

相手の知識レベルを知れば、「相手は何を知っていて、何を知らないか」が分かります。ただし、だからと言って、説明がわかりやすくなるわけではありません。相手がまだ知らないことを、「相手が理解できない言葉」で話してしまう可能性だってあるからです。たとえば、経済のことについて説明をする時、テーマは「経済」ですが、説明に使う単語やたとえは、「日常用語」です。つまり、どんな日常用語で話したら、相手が経済の話題を理解できるか、を考えなければいけないわけです。「その分野の前提知識」を知っただけでは、それは分かりません。

 

●自分が推測するだけでは不十分

ただ、このように説明すると、「そんなことは分かってる。説明する方が『相手がどんな内容、どんな言葉だったら理解できるか』を推測すればいいんでしょ?」と考えがちです。でもそれは違います。

それは、「自分で推測しただけ」では、間違う可能性が高いからです。説明者が自分の頭の中で考える「相手」は、所詮「説明者が作り上げたもの」です。ですから、そもそもイメージしている人物像が実物と違っていたとしたら、いくら詳細にイメージしたところで意味がありません。

ここでまた大きなポイントがあります。相手のことを知るためには、自分がいるところから相手のことを推測するのではなく、相手の場所に自分が移動して、「相手の世界観」を共有してみることが必要です。そうしなければ、適切な言葉や表現は見えてきません。

それはちょうど大人と子供が違うのと一緒です。大人と子供では目線の高さが違うので、当然「見えている世界」が違います。大人にははっきりと見えているからと言って、子供にも同じものが見えているとは限りません。

そして、子供には何が見えているかを知るためには、大人の目線から見るのではなく、子供の目線に移動しなければいけません。子供と同じ目線から見て、初めて「子供の目から見た世界」が分かるのです。同時に、大人からははっきりと見えていたものが子供からは見えていないということにも気がつきます。ここが大事なんです。子供からは見えないものを指して、「あの茶色いビルにね……」などと言っても、子供は何について話しているのかさっぱり分かりません。

 

●相手の世界を体感すると、相手が理解できないポイントが分かる

相手の世界観を共有することで、相手がどこまで理解できそうか、どの段階で躓きそうか、ということがイメージできるようになります。

たとえば、女子高生に「プリクラ」について説明するとしましょう。ここで、女子高生が持っている「世界観」を調べてみます。そうすると、女子高生は「プリクラ」がどんなものかは既に熟知している、ということが分かってきます。「プリクラというものは、ゲーセンにあって、300円~500円でその場で写真ができる遊び。シールになっていて、お絵かきもできる」というような基本的な情報は、伝える必要がないなということが分かるのです。

一方で同時に、彼女たちはプリクラの原理(どうして短時間でできるのか、どんなインクを使っているのかなど)や、プリクラのビジネスモデル(1回あたりの原価はいくらか、どのように進化をしてきたのか、など)までは知らないだろう、ということも分かってきます。

とすると、「プリクラ自体の説明」はほぼ全員知っているから不要、同時にプリクラの原理やビジネスモデルについては知らないでしょう(これらを説明するときは、丁寧に、かつ彼女たちに興味を持ってもらえるように工夫して伝える必要がありそうだ、とも分かります)。

相手が自分よりかなり年下だからといって、情報のすべてを逐一説明しなければいけないわけではありません。また、自分にとって常識的な内容だからと言って、相手のことを考えず端折ってはいけません。常に「相手がどう考えるか」を考えつつ、「では何を伝えなければいけないか」を考えるべきなのです。

 

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