どんな話も自動的にわかりやすくなってしまう、たったひとつの「伝え方の法則」
長々と話すのだけど、その話がどこに向かっているのかわからない……。
話があっちこっちに飛んで、何を話そうとしているのかが掴みづらい……。
やたらと力説するけれども、話に説得力がない……。
みなさんの周りにも、こんな人いませんか? 一生懸命話してくれているのはわかりますが、聞きいている方は、「わかりにくいなぁ」「なんだかモヤモヤするなぁ」と思っています。
なぜこうなってしまうのでしょうか?
その理由は簡単です。話の組み立てが間違っているからです。相手がわかりやすい順序で伝えていないからなのです。逆に、正しく話を組み立てられれば、相手はみなさんの言いたいことにスッと納得してくれるようになります。
「話を正しく組み立てる」と聞くと、「理路整然とロジカルでスマートに伝えなければならない!ということか。自分にはできない……」と難しく考えてしまいがちです。ですが、まったくそんなことはありません。たったひとつの「伝え方の型」を覚えるだけでいいのです。その型の通りに話せば、わかりやすく話を組み立てることができます。
それが「テンプレップの法則」です。
T(テーマ) 最初に、テーマを伝える
N(ナンバー) 次に、言いたいことの数を伝え
P(ポイント) それから、要点(結論)を先に言う。
R(理由) その後で、その要点(結論)が正しいと言える理由や
E(具体例) 具体例を伝え、
P(ポイント) 最後に要点を繰り返し念押しする
各要素の頭文字をとり、(多少強引に)日本語読みすると「テンプレップ」になります。この順番で伝えれば、自動的に話がわかりやすくなってしまうんです。つまりこういうことです。
- 話のテーマ(Theme)
話のテーマを冒頭で伝える。「これから〇〇について話をします」 - 言いたいことの数(Number)
言いたいことはいくつあるのか?を伝える。「お伝えしたいことは〇個あります」 - 要点(Point)
言いたいことのポイント・要点を伝える。「結論から言いますと、お伝えしたいのは××ということです。」 - 理由(Reason)
伝えた「結論」が正しいと言える理由を伝える。「(結論から言いますと、××です。)その理由は〇〇です」 - 具体的な話(Example)
「結論」を補足する具体例を示す。「たとえば、こういうことがあります。(だからこの結論で正しいのです)」 - 要点・まとめ(Point)
最後に「要点」を繰り返す。「ということで、今回お伝えしたいのは××でした。」
この7つの順番で話す。これが、わかりやすく伝えるための「絶対法則」です。ほぼすべての内容を、この型に当てはめて伝えることで、わかりやすく伝えることができます。
では、次にこの「テンプレップの法則」の中身を、具体的に説明していきます。
鉄則1 必ず「何の話しか?」を伝える(①テーマ)
わかりやすく伝えるために、絶対に外して考えられないのは、「テーマ(何の話しか?)を伝える」ということです。どんなことでも、まずテーマ(何についての話なのか?)を伝えなければいけません。テレビのニュースは、すべて「テーマ」を最初に伝えています。
ニュースを紹介するときに、アナウンサーは必ず最初に、「今日、○○で××の事件が起きました」「今日は東京で××祭りが開催されました」など、まず「何の話か?」を伝えています。そして、その後にニュースの詳細を読んだり、現場のVTRなどが流れて、詳しい解説が始まります。
このように「テーマ」から話し始めることで、視聴者は「これから○○の話をするんだな」と、あらかじめ”そのつもり”になれます。”そのつもり”で話を聞くことが、わかりやすさに直結するのです。
「テーマ」がなく、いきなり細かい話をされると、「何の話なの?」「何を言おうとしてるの?」と、頭のなかが「?」だらけになってしまいますよね。話についていかれず、置いてきぼりをくってしまうのです。聞き手は、真っ白な状態でみなさんの話を聞き始めます。そのため、話を始めるときに、まず話の「全体像」を伝えることによって、聞く人に”頭の準備”をしてもらわなければならないのです。「これから、こういう話をされるんだな」と見通しをもってもらうことができれば、話は格段に伝わりやすくなります。そして同時に、その見通しを持てなければ一気にわかりづらくなってしまうのです。
要するに「これから、こういう話をします」と宣言しなければならないということです。話し始めるときや、書き始めるときには、必ずここから始めてください。これが抜けただけで、途端に相手は話がわからなくなります。
トークのプロであるお笑い芸人も同じ話し方をしています。先日、「人志松本のすべらない話」を観ていて、その徹底ぶりに感心しました。すべての芸人さんが、自分のネタを話し始めるときに、必ず「あのぅ~、ウチの母ちゃんの話なんですけど~」と「話の大枠」を伝えているのです。わかりにくい話をしているようでは、とても「笑い」はとれません。そのために、芸人さんは完璧に訓練されているのでしょう。「さすがプロだ」と唸らされました。
鉄則2 次に、数を宣言した上で、要点(結論)を伝える。詳細はその後。
話のテーマの次は「要点」を伝えるべきです。ただ、その前に、その要点がいくつあるか、“数”を宣言します。「今からお伝えすることは、3つあります。〇〇と××と」「今日は2つの点を議論させてください」など。これは最初にテーマを伝えるのと同様の効果がありますね。これから何個の話をするのかを最初に伝えることで、相手は「そのつもり」になることができるのです。こんな感じです。
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「これから、アベノミクスとは何かについてお話しします。【①話のテーマ】
重要なポイントは3つです。【②数】
アベノミクスでは、(1)積極的な財政政策、(2)大胆な金融緩和政策、(3)成長戦略、の3つを柱にしています。【③要点】」
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いかがでしょうか? これで、「話の全体像」がわかりますね。聞く人は、「これから、だいたいこんな方向で話が進むんだな」と”頭の準備”をすることができます。これが、わかりやすさに直結するわけです。
ここで一点、注意しなければならないことがあります。それは、「全体像」はできるだけシンプルにまとめなければいけないということです。「伝えよう伝えよう」と力むと、ついつい最初から細部に入り込んでしまいます。
さきほどのアベノミクスを解説することを例にすると、
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「これから、アベノミクスとは何かについてお話しします。【①話のテーマ】
重要なポイントは3つあります。【②数】
アベノミクスでは、まず積極的な財政政策を掲げています。景気をよくするために、政府が公共事業などを発注して、「仕事」を世の中につくることが目的です。しかし、ご存じの通り日本は国家債務を膨大に抱えており、これ以上借金をする余裕はありません。自民党が長らく行ってきたバラマキ政治に戻ったのでは? という印象さえ受けます。…… 【③要点??】」
——
これでは、いきなり本題に入ってしまっているのと同じです。せっかく重要なポイントを「3つ!」と宣言しても台無しです。「要点」は、できるだけシンプルにまとめなければいけません。そして、ポイントを伝えた上で、その詳細に入ります。ここで初めて細かい内容を伝えていきます。間違っても、いきなり本論に入ってはいけません。
鉄則3 なぜそう言えるのか? なぜこれを伝えているのか? を具体例と合わせて補足する
詳細を伝えて満足してはいけません。次に、説明した内容について、「なぜそう言えるのか?」「なぜそれが重要なのか?」「どうして、そういうことになっているのか?」を伝えます。そうすることで、伝えたい内容の説得力が増すのです。
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「まず(1)積極的な財政政策を解説します。【③要点】
これは足元の景気を良くするために、政府がこれまで以上にお金を使い、仕事をつくろうという政策です。自民党は、この先10年で200兆円の予算をこの財政政策に使うと言っています。【④詳細】
政府がお金を使って、民間企業に仕事を発注すれば、受注した企業の業績は必ずその分だけ良くなります。この財政政策という手法には、“バラマキ”という批判が常にあります。ですが、今すぐに景気をよくしたい時には、最も手っ取り早い方法なのです。だからこの財政政策が取り入れられるのです。【⑤理由】
景気をよくするためには、他にも重要な政策があります。たとえば法人税の引き下げや規制緩和などです。しかし、多くのものは効果が出るまでに時間がかかります。【⑥具体例】」
——
鉄則4 最後に要点を繰り返して、締めくくる
ここまでで、話の概要を理解し、納得してもらうための材料が提示できました。相手は「ふむふむ、なるほどね」と言いながら、かつ「そっか、そういう話なら納得できる」と頷いてくれます。ただ、もしかしたら、話の詳細ばかりに気を取られて、そもそも何の話をしていたのか、抜け落ちてしまうかもしれません。じっくり集中力を保って聞いてくれれば、理解してくれます。しかし場合によっては具体的な話だけ記憶に残り、「これって、何の話だっけ?」と要点やテーマが忘れられてしまうこともあります。
そこで、最後にもう一度、話のポイントを付け加えるのです。最後に「ということで、今日はこんな話でした」と話の内容を総括します。そうすることで、全体像を印象に残すことができます。相手の頭の中にも、「今回は〇〇の話を聞いた」とスッキリ整理されているでしょう。
これが「伝え方の型」です。この順番で話を組み立てれば、複雑なことでもわかりやすく伝えることができます。
【今日のポイント】
・わかりやすく伝えるには、「テンプレップ」の順番で話を組み立てればいい
・テンプレップの法則とは、
T(テーマ) 最初に、テーマを伝える
N(ナンバー) 次に、言いたいことの数を伝え
P(ポイント) それから、要点(結論)を先に言う。
R(理由) その後で、その要点(結論)が正しいと言える理由や
E(具体例) 具体例を伝え、
P(ポイント) 最後に要点を繰り返し念押しする
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