自分の言葉が、結局一番おもしろい

相手に合わせて表現を変える

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こんにちは、木暮太一です。

「わかりやすい説明」に必要なのは、「相手に理解してもらいたいと思う意識」と「相手に合わせて表現を変えること」です。ここから、ふたつめの「表現」についてお話ししていきます。この「相手に合わせた表現」ができるようになると、難しい内容も相手が分かるように伝えることができます。
じつは、これこそが「わかりやすさ」の本質ですし、コミュニケーション能力を向上させる秘訣でもあります。わかりやすい説明ができるかどうか、相手と自然なコミュニケーションができるかどうかは、突き詰めて考えると「表現の使い分けができるかどうか」なのです。

 

ここでみなさんに質問です。よく「専門用語は難しい」と言われますが、なぜでしょうか? また、本当に専門用語は難しいのでしょうか? 説明の中に専門用語が出てくると、聞いているほうは一気に難しく感じます。でも、その専門用語を知っている人からすれば、スッキリとしていてわかりやすい表現に聞こえます。
つまり、専門用語自体が難しいのではないのです。そうではなく、専門用語を理解できない人にとっては難しい、というわけです。ですから、専門用語が分からない人には、それに代わる一般的な表現を使って説明すれば、理解してもらえます。
逆に考えると、専門用語を知っている人に、それを使わずに表現をしたら、かえって分かりづらくなります。
たとえば、誰かに「私は今日、家電量販店に言って、『パソコンを操作するための機械で、コードが付いていて、カチッと押すやつ』を買ってきました」と言われたら、「マウスでしょ?」と聞き返したくなります。もちろんマウスは今では専門用語とは言えませんが、マウスを知っている人にとっては、その言葉を使ってくれた方がすっと頭に入ります。
一方、マウスを知らない幼児には、「お茶碗をさかさまにしたような形で、そこからヒモが出てるもの」と説明してあげたほうがいいかもしれません。また、パソコンに詳しくないお年寄りには、「パソコンの操作をするリモコンみたいなもの。ネズミみたいなかたちして、しっぽみたいなコードがついている」という表現をしてみる。細かいことですが、お年寄りに対して「お茶碗を逆さまにした形」とか「ヒモが出てる」とかいうと、お年寄りは本当にお茶碗を逆さまにした円錐状の物体をイメージしてしまうかもしれませんね。
要するに、ある人にとってわかりやすい表現も、別の人にとっては分かりづらい表現になるのです。だから、わかりやすい説明をするということは、相手によって表現を変えて、「相手に合わせた表現」をするということなんです。
これができるようになれば、聞き手の年齢や知識を問わず、自分の説明を理解してもらうことができる、つまりわかりやすい説明ができるようになるのです。
「意識」を土台にして、その上で適切な表現ができるようになれば、よりわかりやすい説明ができるようになります。

 

●相手に合わせた表現をするためには?

ここからは「相手に合わせた表現」をするための練習方法をお話ししていきます。さきほどもお伝えしたように、これこそが「わかりやすく説明する技術」の本質です。この「表現の使い分け」ができるようになると、みなさんの説明力は格段に向上します。
そして、「相手に合わせた表現」ができるようになるためには、「相手が理解できるように柔軟に表現を変える力」を身につける必要があります。

 

●柔軟に表現を変える力を身につける

相手に合わせて表現を変えなければいけません。でも、これがまたやっかいです。最初は注意しつつも、説明が進んでいくにつれ、どうしても自分が使い慣れている表現で説明してしまうからです。
ただし、最初にお伝えしたように、これは「頭がよくない」「センスがない」といったことが原因ではありません。この原因は、「頭の堅さ」です。頭が堅いと、自分が使いなれている表現だけでしか説明できなくなるのです。相手に合わせて、表現を変えるためには、頭の柔軟体操をする必要があります。

ただし、ここでいう「柔軟体操」とは、「発想力を豊かにする」という類のものではなく、「同じことを別の言葉で表現する練習」です。
多くの人が、日々決まった生活を送っています。同じ家で寝起きして、同じ会社や学校に通います。転職したり、社内異動することもありますが、そう頻繁にあるわけではありません。そうすると、必然的に毎日同じ人と顔を合わせて、決まった人たちと会話をし、メールのやり取りをしているわけです。
そうなると、誰でも、自分が使い慣れている言葉や表現方法で意思の疎通を図るようになります。同じメンバーで会話をしている時に、わざわざいつもとは違う言葉づかいで話したりしませんね。その方が相手に伝わりやすいからです。でもその結果として、気がつくと、決まり切った表現しかできなくなっています。これでは、体と一緒で、知らず知らずのうちに「稼働域」が狭まってしまいます。

だから、時には柔軟体操をして、表現の幅を広げておく必要があるわけです。

「いや、自分は営業マンだから、毎日違うお客さんと会っている」と反論される方もいらっしゃるでしょう。しかし、そんな方も、日々会っているのは、「自分と同じ世界の人」のはずです。たとえば、大企業を担当している営業マンだったら、会うのは「一流の大学を卒業して、就職をし、毎日スーツを着てオフィスで仕事をしている人たち」です。そこに「女子高生」はいませんよね。

「同じ言葉で通じる相手ばかりなんだったら、このままでいいじゃないか」
そんな声も聞こえてきそうですね。でも、当然ながら、私たちの周りにいる人は全員同じ人間ではありません。そのため、同じ言葉を理解できない人がいたり、違うテーマが全く理解できない人がいたりするんです。そんなときに、頭が堅くなっていると、相手にわかりやすく説明することはできません。

スポーツの前に柔軟体操をするように、説明の前に、この「柔軟体操」をしておけば、誰でも表現の幅が広がり、説明が格段にわかりやすくなります。
では、頭の柔軟体操とは、具体的に何をすることなのか? 私が勧めているのは、カタカナ語や専門用語などを親しみやすい日本語に言い換えることです。
たとえば、「カタカナ語」です。ただ、「テレビ」や「タクシー」など、もはや日本語になっていて、代わりの日本語が見つからないようなものを強引に日本語にする必要はありません。みんながなんだかよく分からないまま使っているようなカタカナ語です。
[問] 次のカタカナ語を日本語に言い換えてください。

・タイムスケジュール
・アジェンダ
・デポジット
・プライオリティ

いかがでしょう? わかりやすい日本語にするとなると、案外頭を使うものです。最初は少し大変ですが、慣れてくればすんなりとできるようになります。
他にも、「名詞を動詞に言い換える練習」「熟語を文章にする練習」などが、頭の柔軟体操としては有効です。

[答]
タイムスケジュール →時間割
アジェンダ → 検討課題
デポジット →保証金、預け金
プライオリティ →優先順位

 

●私の頭が柔らかくしてくれた英語の授業

私は、代々木ゼミナールの英語講師・富田和彦さんの授業を通じて、この「わかりやすく説明する技術」を学びました。
「英語とわかりやすく説明する技術と、どう関係があるの?」と不思議に感じる方もいるでしょう。そこで、私が富田先生の授業から、どのようにこの技術を身に付けたのか、説明します。

突然ですが、「often」という単語を何と訳しますか?
おそらく9割以上の方が「しばしば」と訳すでしょう。「しばしば」で正しいです。でも、考えてみてください。日本語で、「しばしば」って使いますか? 日本で言うなら「たまに」「時々」ではないでしょうか?
「しばしば」と「たまに」「時々」に明確な区別をして使っているのなら、まだ話は別です。でもそういう人は稀だと思います。
私たちは、中学校の英語の授業で「『often』は『しばしば』と訳す」と教えられました。そして、その訳が適切かどうかは、再検証する機会はほとんどありません。そのため、「often」が出てきたら、そのまま「しばしば!」と訳してしまうのです。
富田先生の授業では、「本当にその訳でいいのか?」「日本語として意味は通じているのか?」を徹底的に考えさせられました。ここで、「より適切な表現がないか考える癖」が身に付き、同時に「より適切な表現を見つける技術」も学んだのです。
それまで私は「often」が出てくるたびに、常に「しばしば」と訳していました。でも、時と場合に合わせて日本語訳を変化させることができるようになったのです。子供のセリフだったら「たまに」、上品な老人の言葉だったら「時折り」、学生が言った言葉だったら「っていうか、最近さぁ」と訳せるようになりました。
当時は全く気が付いていませんでしたが、その時まで「ガチガチに堅かった頭」が「柔らかく」なっていたのです。

じつは、このTPOに応じて訳を変える能力が、相手によって説明表現を変える力と全く同じなのです。この「訳し方」ができるようになると、自然に「この相手だったら、この表現が適切だな」と考えられるようになるわけです。

つまり、私はこの授業を通して「頭の柔軟体操」を行っていたことになります。
そして、徹底的に頭の柔軟体操を繰り返したおかげで、その後は、時と場合と相手に合わせ「伝え分け」ができるようになりました。

繰り返しになりますが、これは頭の良さ(IQの高さ)やセンスではありません。継続的に頭の柔軟体操をしていれば、誰もが身につけられる技術なのです。

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